初めて税務調査が入ると、悪いことをしたのかと疑われていると感じる方がいるのですが、税務調査は基本的に税務署が定期的に行う任意の調査です。
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税務調査は査察ではない
税務調査というだけで国税局の査察を想像する方が少なくありません。
国税局査察部の行う査察は悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的とした強制調査です。
国税局査察部は裁判所の令状を持って突然やってきます。警察が行う家宅捜索と同じイメージですね。
私はこの業界で働いてもうすぐ20年になりますが、もちろん査察は経験したことなどないですし、身近で査察があったという話も聞いたことはありません。それだけ稀なものです。
確かに税務調査もあまり良いイメージはないですが、通常は事前に通知があり日程を決めて調査が行われます。
事前通知
税務調査はまず事前に税務署から「〇月〇日に調査にお伺いしたいのですが、いかがでしょうか?」という連絡が入ります。関与税理士がいて、申告時に税務代理権限証書を提出している場合には、納税者ではなく関与税理士にこの連絡がきます。
まずは日程のすり合わせです。先方の提示している日にちでお互い都合がよければ問題ないですが、都合が悪い時は別途都合の良い日にちを決めます。
関与税理士がいる場合には税理士が立ち会うことがほとんどですので、会社(社長、経理)、関与税理士、税務署の三者で日程調整をしなくてはなりません。
会社の規模によるのですが、中小企業だと通常は2日間と言われることが多いです。連続する2日間の日程がとれない時は間をあけても大丈夫ですが、古い書類を倉庫から出したり、質問に答えたりなどで、通常業務にも多少差し支えがあるので、連続する2日間で済ませてしまおうという方が多いです。
日程が決まると税務署が改めて事前通知というものを行います。事前通知は通常電話です。そこで下記の内容などを改めて通知し、確認するのです。
- 調査の日程
- 調査の場所
- 対象となる税目(会社や個人事業者の場合だと、法人税、消費税、源泉所得税)
- 調査対象期間
- 調査の対象となる帳簿書類
- 調査を行う調査担当員の氏名や所属
この事前通知も、関与税理士がいる場合には税理士に行われます。
どの資料をどれくらい用意する?
調査の対象は通常前期以前3期分が対象になります。3月決算法人に今調査が入るとすると、調査対象期間はH30年3月期、H29年3月期、H28年3月期の三期間です。
主に用意する書類は三期間分の下記の書類です。
- 申告書
- 決算報告書
- 総勘定元帳
- 資産台帳
- 源泉徴収簿
- 扶養控除申告書、保険料控除申告書
- 上記に付随する証憑類(請求書、領収書、契約書など)
最近はペーパーレスが進みメールのみでやり取りをする会社も増えてきているので、パソコンを見ることもあります。
質問されたことにのみ正確に答える
初日の午前中は代表者から会社の概要をヒアリングすることがほとんどです。
沿革、事業内容、従業員の業務分担など。そしてヒアリングが済むと、総勘定元帳などを開いて実際の調査が始まります。
書類としては三期分用意しますが、重点的に見るのはまず直前期。その直前期で懸案事項があった場合に、さらに前々期とさかのぼることが多いです。
税務調査は申告が正しく行われているかを確認するための調査ですから、まずは質問されたことにのみ正確に答えていくのがよいと思います。(たまに緊張して冗舌になってしまう方がいるのですが、あまり多くを語る必要はないでしょう。)
会社に経理の方がいる場合には、社長は調査の最初と最後だけ同席して、それ以外は経理の方が質問に答えるということもあります。
調査が終わると
誤りがなかった場合
調査が終了し申告に誤りがないと認められる場合には、「更正決定等をすべきと認められない旨の通知」という書類が後日郵送されてきて、全て終了します。
誤りを指摘された場合
申告に誤りが認められる場合には、調査官がこの修正箇所を説明し、納税者に修正申告を勧奨します。
修正箇所といっても、明らかに間違っているものと、法令上は明確な規定のないグレーゾーンのもので、納税者側と税務署側の見解の相違によるものもあります。交渉の余地があるものもありますので、説明はしかっり聞く必要があります。
ここで最終的にどの部分を修正申告するかを決め、誤りがあった箇所につき修正申告を行います。
まれに修正すると税額が少なくなる場合があります。この時は税務署側で減額更正の手続きをしてくれます。
何をどれくらい支払うのか?
修正申告の場合には、修正申告により増えた追徴税額を支払わなくてはなりません。
そしてこの追徴税額をもとに、後日延滞税、過少申告加算税、不納付加算税などの附帯税の納付書が届きますので、これも支払わなければなりません。
また調査は国税ですが、法人税で修正申告をすると、地方税も修正申告が必要になることがほとんどですので、その場合には同じタイミングで地方税の修正申告を行い地方税の追徴税額を支払います。
もちろん地方税の追徴税額についても、延滞金、過少申告加算金などの附帯税が発生します。
最後に書きにくいのですが、関与税理士が立ち会った場合には税務調査の立会料を請求されることが多いです。立会料も安くはないですね・・・
私もこれは顧問料と別に料金設定しています。
さらに税理士事務所にもよりますが、修正申告料を請求される場合もあります。
納税者側からはなかなか聞きにくいですが、修正申告による臨時報酬が高額になる時もあるので、事前に関与税理士に確認をすることをおススメします。
【編集後記】
運転免許証の更新時期になりました。
どういうわけか運転免許証の有効期限につき1回違反でつかまります・・・
今回もやはり一般運転者講習です。毎回あの1回がなければと思うのですが、上手くいきません・・・