自社で入力を行いたいが簿記の知識がない、新しく入った経理の方は会計ソフトをいじったことがないというような状況で記帳指導をすることがあります。
それでは簿記の基礎から教えなきゃいけないのか?どれだけ時間がかかるんだ?と思われがちですが意外と何とかなるものです。
スポンサーリンク
複式簿記で処理をする
複式簿記は一つの取引を2面性でとらえて処理を行います。
例:青果店で100,000円の現金売上があった というのは下記のように処理します。
現金 100,000 / 売上 100,000
これは①現金が100,000円増えたということと②100,000円の売上があったという2面性をこの一行で記録しているわけです。
複式簿記は必ずこうして左と右で取引の2面性を表し、必ずこの左と右の金額が一致します。会計用語ではこの左側を「借方」右側を「貸方」と言います。日商簿記の授業などではこういった用語を使って説明をしています。
時間がいくらでも許されるのであればこのような基本の基本から入っていくのが理想的なのですが、通常記帳指導を依頼される時は「領収書がたまってしまっているが入力に仕方がわからない」や「経理がやめてしまい会計処理がたまってしまった」など時間のない場合の方が多いのです。
借方と貸方ではなくて左と右にしてみる
私が簿記の知識がない方へ記帳指導を行う時にまずお教えするのは、上記のように複式簿記なので2面性をとらえて入力するということと、現預金が増えたら左減ったら右ということです。
慣れてくれば借方と貸方でもかまわないのですが、慣れていないうちに借方と貸方を使うと、そこで「借入金なのになんで貸方なんだ?」「貸付金なのになんで借方なんだ?」と余計な疑問が出てきてしまう場合もあります。
まず現預金の処理に慣れていただきたい時は、私はこの現預金が増えたら左減ったら右を連発しています。
さきほどの現金売上の例示も現金が増えたので左側に記載されていると思います。逆に30,000円の現金仕入れを行った場合だと
仕入 30,000 / 現金 30,000
となります。現金が減っているので現金は右側にきています。
現預金の増減がわかったら何で増えたか?何で減ったか?を考える
現金が増えたら左減ったら右をおぼえたら、相手側にその増減の要因となった項目を入れます。
最初の例示だと現金100,000円の増えた要因は売上です。従って相手の項目(会計上は相手科目といいます)は売上となるのです。同様に二つ目の例示だと現金30,000円の減った要因は仕入です。従って相手科目は仕入となります。
実際に会計ソフトに入力してみると、このような感じになります。
①日付 ②左科目(借方)③右科目(貸方)④金額 ⑤適用
⑤の適用は取引の概要がわかる程度に内容を入力しておきます。また適用欄の横は消費税区分です。ここは最初はデフォルトのままいじらないほうがよいでしょう。免税事業者の方は免税の設定にすればこの欄は出てきません。課税事業者で顧問税理士のいる方は税理士にまかせましょう。課税事業者で顧問税理士のいない方は消費税の基本を少し勉強されることをお勧めします。
たまっている領収書は費目ごとにまとめておくと入力しやすい
たまっている領収書も費目ごとに分けてみると種類はあまり多くないと思います。交通費、交際費、車両費(燃料費)、水道光熱費、通信費など最初は入力前に領収書を分けておくと入力しやすいです。
また現金払いの領収書の入力は枚数が多くて面倒なのですが、右科目(貸方)は現金で一定です。全て現金が減っている取引ですので。左科目(借方)に迷った時は会計ソフトにたいてい科目案内のウィンドウがありますので、それを参考にして入力してみてください。
通帳の入力も原理は同じ 預金が増えたら左 減ったら右
通帳の入力に関しても預金が増えたら左減ったら右という考え方は現金と全く同じです。普通預金から5,000円の電気代が引き落とされた場合は
水道光熱費 5,000 / 普通預金 5,000
となります。普通預金の減る取引なので普通預金は右側に記載し、何で減ったのかという要因を左側に「水道光熱費」と記載します。
ちょっと頑張って通帳残高と元帳残高を合わせる
会計ソフトには元帳という画面があります。初めての方には少し難しいのですが、それでもたいていお願いしているのが通帳残高と元帳の残高の照合です。
元帳は入力画面で入力した各科目の集計が表示されるところです。
これは普通預金の元帳画面。入力画面で通帳の通りに入力していると、元帳画面の右下の残高と同じ時点での通帳残高は必ず一致します。同じにならない場合はどこかに入力間違いがあるはずです。
わからなくなったら見本の入力を見てもらう
私は簿記の知識がない方や入力が初めての方には上記のような手順で記帳指導を行っていきますが、最初の1~2か月分はこちらで入力を行ってしまうことがあります。それは困った時に入力済の見本を見てもらうためです。
困ったら前の月と同じように処理してみてくださいとお伝えすると、初めての方でも何となくかたちになってくるのです。慣れていない方には、あまり深い意味を考えずに機械的におぼえていただくことも必要です。
そうやっていくうちにきちんと意味が分かって処理ができるようになった方はたくさんいらっしゃいました。
最後は税理士のフォローアップで
このような流れで最初少し時間をかけて記帳指導を行い、会計データのやりとりを始めます。
送られてきた会計データは税理士側で監査を行いますが、もちろん最初は訂正箇所がたくさんあります。監査が終わったあとに全ての訂正箇所を報告しても、余計難しく感じてしまうかもしれないですから、私は重大な誤り(右と左が逆になっていた、普通預金の出金だけ入力し入金が入力されていなかったなど)のみお伝えしています。
時間がたって慣れてくると、私がお伝えしなかった細かい訂正箇所も、ご自身で見ながら訂正を行って習得されていく方が多いです。ここまで教えてないのに翌月にはなおっているとわかると、私もうれしくなるものです。
簿記の知識がない方でも記帳指導をきちんと行えば会計入力はできるようになります。最初はとにかく機械的に深く考えずに行ってみましょう。
【編集後記】
仕事中はたいていコーヒーを飲んでいます。
自宅で仕事をするようになってから、どうゆうわけかコーヒーの入ったマグカップをひっくり返すことが多く・・・・勤務してたころはそんなことなかったのに、緊張感が足りないのでしょうか・・・
諦めて仕事中はふた付きのタンブラーしか使わないことにしました。