特に賞与に関する規定を定めず、定期的に賞与の支払いをしていない会社はたくさんあると思います。
このような会社でも、業績が良い時には従業員に還元したいと、お疲れ様という気持ちで現金を手渡してしまうということがあるのではないでしょうか?
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寸志でも心づけでも「賞与」です
給与でもなく、通勤費でもなく、立替経費でもなく従業員にお金を支払う場合、その名目が寸志であっても心づけであっても税務上の取扱いは「賞与」になります。
従業員が頑張ってくれたおかげで業績があがったから、ぱ~っと現金を渡してあげたいという気持ちはわかりますが、「賞与」ですので源泉税や社会保険料も控除しなくてはなりません。
現金払いは領収書をもらう
普段は給与振り込みをしているけれども、現金を渡してしまったという場合には、面倒でも従業員の方から領収書をもらいましょう。
用紙は会社側が用意するものでかまいません。
何もないと、支払って受け取ったという取引自体の証明が全くないことになってしまいます。
今さら税金や保険料の分を返してろ言えない場合はグロスアップ計算を
従業員に、何の控除もせず現金を手渡してしまった。今さら税金と保険料の分を返してくれとは言えないという時もあるでしょう。
そのような時は、手取り額から総支給額を逆算するグロスアップ計算を行ってください。
まずは源泉所得税を計算
前提条件:扶養親族0人 前月給与の社会保険料控除の金額32万円
賞与の源泉所得税の税率を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(平成30年分) 」から求めます。
この場合賞与に対する税率は、8.168% です。
ここからは中学生の連立方程式です。
A=源泉所得税控除前の金額 とすると
A-A×8.168%=100,000 ∴A=108,894
従って、総額から社会保険料を差し引いた金額が108.894円になります。
雇用保険と社会保険料も同じ要領で
社会保険料は標準賞与額(賞与支給額から千円未満を切り捨てた金額)に社会保険料率を、雇用保険料は賞与支給額に雇用保険料率を、それぞれ乗じて計算します。
雇用保険料率→0.3%(一般の事業とします。)
健康保険料率→5.75%(事業所は神奈川県、介護保険の被保険者とします。)
厚生年金保険料率→9.15%
そしてここでまた連立方程式
B=賞与総支給額とすると
B-B×(0.3%+5.75%+9.15%)=108,894 ∴B=128,412
検算してみよう
雇用保険料 128,412×0.3%=385
健康保険料 128,000×5.75%=7,360
厚生年金保険料 128,000×9.15%=11,712
108,894+385+7,360+11,712=128,351←賞与の社会保険料が1,000円未満を切り捨てしてから料率をかけるので端数にズレが出るのです。
そこで128,351を賞与支給総額として再度検算します。
雇用保険料 128,351×0.3%=385
健康保険料 128,000×5.75%=7,360
厚生年金保険料 128,000×9.15%=11,712
保険料に差は出ないので、賞与支給総額は128,351となります。
賞与明細は
賞与 128,351
健康保険 △7,360
厚生年金 △11,712
雇用保険 △385
社会保険料控除の金額 108,894
源泉所得税 △8,894 (108,894×8.168%)
差引支給額 100,000
これをもとに会計処理も行います。
源泉所得税の納付と賞与支払届もお忘れなく
賞与の支給ですので、源泉所得税は翌月10日(納期の特別の場合には7月10日もしくは1月20日)までに納付が必要です。
さらに社会保険事務所に賞与支払届を提出する必要があります。
【編集後記】
ようやく年末調整のバージョンアップができるようになりました。
1年ぶりだと、31年分の扶養控除申告書を印刷するつもりが30年分だったり、送付案内を見返していたら不足事項があり再印刷したり、作業が意外と進まないです・・・
とにかく送りましたが、早め早めで焦らないよう進めていきたいものです。