事業を始めると、これまで個人の家計簿にはなかった減価償却という考え方が出てきます。
わかっているようでわからない部分も多い、減価償却の原則的な部分をみていきます。
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減価償却とは?
減価償却とは長期に渡って使用される固定資産(建物、車両、備品など)の取得費を、その使用される期間に配分して費用計上する手続きをいいます。
企業会計には収益費用対応の原則というものがあります。簡単に言うと、売上とその売上を上げるためにかかった費用は、同じ事業年度で対応関係がなくてはならないということ。
極端な話、当期の売上をあげるためにかかった費用が、来期に計上されてはなりません。その逆もしかり。来期の売上を上げるためにかかった費用を当期に計上してしまっては、収益と費用が対応しなくなってしまいます。
この長期に渡って使用される固定資産の取得費は、その使用される期間すべての売上に貢献しているわけだから、取得費もその使用される期間に配分して、費用計上するというのが減価償却です。
実務的には税法上の規定で計算する
法定耐用年数
実際に個々の資産の使用可能期間を正確に把握することは困難です。
そこで税法上は資産の種類ごとに法定耐用年数を定めています。
そしてその取得価額(取得費)と法定耐用年数をもとに、選択した減価償却方法により各事業年度の減価償却費の金額を計算します。
減価償却方法を選定する
新しく事業を始めた場合、法人は設立事業年度の確定申告期限、個人事業者は事業開始年度の翌年3月15日までに、「減価償却資産の償却の方法の届出書」を提出します。
選定できる方法は下記のとおり。資産の種類と取得年月日によって異なります。
法定償却方法
また上記の「減価償却資産の償却の方法の届出書」の提出がなかった場合には法定償却方法により減価償却の計算を行います。
法定償却方法は下記のとおり。法人もしくは個人、そして資産の種類ごとに異なります。
キャッシュアウトのタイミングと費用の計上時期にズレが生じる
減価償却をする場合、固定資産の取得に要したお金は支出しているにも関わらず、その全額が当期の費用にはなりません。
当期の費用に計上できない部分の金額は、いったん資産として計上されます。
翌期以降は逆の現象がおこり、お金の支出はないが、減価償却費という費用が計上されます。
このキャッシュアウトと費用計上のズレが減価償却の一番の特徴で、注意すべき点でもあります。特に多額の設備投資を行った場合には、その全額が支出した年度の費用には計上されないため、その分所得金額も多くなり税金も多くなるわけです。
ただし翌期以降は支出を伴わない費用が計上されて、その分所得金額も少なくなり税金も少なくなります。
長い期間で見た場合には損益に与える影響は同じなのです。しかし会計期間は通常1年で区切って計算をするため、設備投資のさいには固定資産の取得に要する金額、費用計上できる金額、それに伴う税額の推移などを考慮する必要があります。
【編集後記】
これだけ償却方法の選定などについて書きましたが、私は「減価償却資産の償却の方法の届出書」を提出していません・・・
全て法定償却方法で問題ないので、最初から提出しませんでした。
これもひとつの選択肢です。