猫のいる税理士事務所 河津牧子のブログ

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役員退職金の額

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役員の退職給与は会社への貢献度から高額になることが多いです。

税負担に与える影響も大きく、利益処分の性格も有するとされることから、法人税法では「不相当に高額な部分の金額」は損金の額に算入しないとしています。

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役員退職給与の算定方法

役員退職給与が適正額であるということを示すために、一般的には下記の方法をもちいて役員退職給与を算定します。

功績倍率法

役員退職金の算定で最もよく用いられる算定方法で、下記の算式により算定します。

役員退職給与=最終報酬月額×勤続年数×功績倍率

功績倍率は、その役員の会社への貢献度、同業種類似規模法人の平均功績倍率などを勘案して算定します。

平均額法

平均額法は下記の算式により算定します。

役員退職給与=類似法人の役員退職給与の1年あたりの平均額×勤続年数

功績倍率法の場合、最終報酬月額がその役員の功績を適正に反映した金額である必要があります。

業績悪化など一定の理由で、役員が無報酬や低額の報酬で業務を行っていた場合には、功績倍率法で適正な金額を算定することができません。

そのような場合に、この平均額法により算定を行うことがあります。

功績倍率をめぐる判例

役員退職給与の不相当に高額な部分の金額については、条文や通達でも具体的数値の明文規定はありません。

そのため、支給した役員退職給与の金額が、その役員の会社への貢献度、勤続年数などをふまえて適正な金額であるかどうかは、国税不服審判所や裁判で争われることもありました。

特に金額の重要な要素となる功績倍率については論点となるところであり、地裁と高裁で判断が大きく変わった下記のような裁判もあります。

東京地裁での判決

[納税者]
最終報酬月額240万円、勤続年数27年、功績倍率6.49倍、退職給与4億2千万円

[税務署の処分]
納税者の所在している県内の同業で、売上規模などの似た法人の中から、原告法人同様に代表取締役が死亡、退職給与を支給した5法人の平均功績倍率を計算。

この倍率が3.26倍だったことから、3.26倍を基準に、それ超えた金額部分について「不相当に高額」とした。

[判決]

  • 平均功績倍率を少しでも超えるものを「不相当に高額」と考えるのは硬直的な考えと指摘
  • 納税者が同業類似法人の役員退職給与を参考にすることは、税務署のような厳密な調査は期待できない
  • そのうえで、役員退職給与として相当であると認められる金額は、事後的な税務署側の調査による平均功績倍率を適用した金額から相当程度の乖離を許容するものである

    特段の理由がない限り、平均功績倍率の1.5倍を用いて役員退職給与の適正額を算定すべきとし、国税当局が算定した3.26倍に1.5を乗じた4.89倍を採用。3億1687万円を超える金額部分を「不相当に高額」になるとした。

これに対して、国側は処分を不服として高裁に上告しました。

東京高裁の判決

  • 東京高裁は原審の「特段の理由がない限り、平均功績倍率の1.5倍を用いて役員退職給与の適正額を算定すべき」という判断を削除
  • 平均功績倍率法は、その同業類似法人の抽出が合理的に行われる限り、本件おいて役員退職給与相当額を算定する方法として、法令の趣旨に最も合致する合理的な方法であるとしたうえで、税務署側が採用した同業種類似法人の抽出基準はいずれも合理的であると判断

    税務署の課税処分は適法であると結論づけた。

逆転判決により敗訴した納税者側は、上告及び上告受理申し立てを提訴しています。

【編集後記】

週末は横浜アリーナでKAT-TUNのコンサートなのですが、ようやくデジタルチケットが届きました。

なんとQRコードが点滅していて、スクリーンショットでは入場不可。

転売禁止のための措置だと思いますが、そのため席がどこかも当日までわからず・・・ドキドキです。

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