税制上の優遇制度として、資産を新しく取得した場合に特別償却や特別控除認められる場合があります。
この特別償却と特別控除、どちらがお得なのでしょうか?
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特別償却は課税の繰り延べ
特別償却は、通常の減価償却よりも早い期間で費用化できます。
普通償却限度額の他に取得価額の〇〇%を減価償却費として計上できる。結果的に適用年度の減価償却費が増えるため、課税される所得金額を少なくすることができます。
ただし、減価償却の計算自体が、資産の取得価額を複数の期間で費用化するため、長い目で見れば費用に計上できる金額の総額に変わりはありません。
あくまでも早期に償却費を多めに計上できる。これが特別償却です。このため本来支払うべき税額を後回しにできるような効果があるため、「課税の繰り延べ」とも言われます。
特別控除は恒久減税
特別控除は特別償却とはちがい、一定の年度に限り税額を特別に控除する制度です。
ある年度で特別に控除された税額が、翌年以降に加算されるなどということはありません。
従って恒久減税となるわけです。
中小企業投資促進税で計算してみる
中小企業者等が一定の資産を取得した場合に、特別償却または特別控除を認める中小企業投資促進税制というものがあります。
この制度で実際に計算してみます。
制度の概要
特別償却の対象法人
青色申告法人である中小企業者(※)または農業協同組合等
※中小企業者とは、次に掲げる法人をいいます。
イ 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
ただし、同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。)に発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を所有されている法人及び2以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を所有されている法人を除きます。
ロ 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
特別控除の対象法人
特別償却の対象法人のうち、資本金の額もしくは出資金の額が3000万円超の法人以外の法人
対象となる指定事業
製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業を除きます。)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、情報通信業、駐車場業、損害保険代理業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育、学術支援業、医療、福祉業、協同組合及びサービス業(廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業紹介・労働者派遣業、その他の事業サービス業)
(注)不動産業、物品賃貸業、電気業、水道業、娯楽業(映画業を除く)等は対象になりません。また、性風俗関連特殊営業に該当する事業も対象となりません。
対象資産
(1)機械及び装置で1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの
(2)事務処理の能率化、製品の品質管理の向上等に資する測定工具及び検査工具(平成24年4月1日以後に取得等をしたものに限ります。)で、1台又は1基の取得価額が120万円以上のもの
(3)上記(2)に準ずるものとして測定工具及び検査工具の取得価額の合計額が120万円以上であるもの(1台又は1基の取得価額が30万円未満であるものを除きます。)
(4)ソフトウェア(複写して販売するための原本、開発研究用のもの又はサーバー用のオペレーティングシステムのうち一定のものなどは除きます。以下同じ。)で次に掲げるいずれかのもの
イ 一のソフトウェアの取得価額が70万円以上のもの
ロ その事業年度において事業の用に供したソフトウェアの取得価額の合計額が70万円以上のもの
(5)車両及び運搬具のうち一定の普通自動車(注)で、貨物の運送の用に供されるもののうち車両総重量が3.5トン以上のもの
(6)内航海運業の用に供される船舶
特別償却限度額
基準取得価額の30%相当額の特別償却限度額を普通償却限度額に加えた金額
基準取得価額は、船舶の場合は取得価額の75%相当額。それ以外の資産は取得価額相当額です。
税額控除限度額
税額控除限度額は、基準取得価額の7%相当額
ただし、その事業年度の法人税額の20%相当額をが限度となります。
実際の計算
[具体例]
川崎商事株式会社
卸売業
資本金1,000万円
従業員数100人
2019年4月決算(6月申告)の課税所得金額500万円
2018年5月1日に1基100万円のソフトウェア(耐用年数5年)を購入
特別償却を選択した場合
特別償却費の金額 100万円×30%=30万円
∴30万円課税所得が少なくなる
少なくなる法人税額 30万円×15%=45,000
特別控除を選択した場合
税額控除額 100万円×7%=70,000 ←少なくなる法人税額
法人税率や法人税額により適用に差が出る
上記の計算例だと、中小企業者で課税所得も800万円以下のため、法人税率が低く、税額控除が断然有利になりました。
ただし課税所得が多くて法人税率も高い場合、あるいは法人税額が少なくて特別控除の効果が出ない場合など、ケースはさまざまです。
まずは試算を行い、当期の節税を優先するのか?複数年での節税効果を優先するのか?などを考慮して選択をすることが必要です。
【編集後記】
マイナンバーが健康保険証として使えるようになるとか!
なかなか思い切った政策ですが、なかなか上がらない普及率を上げるための起爆剤になるのでしょうか?
私も念のため、通知カードの封筒を確認してみました。