この3月で決算をむかえる会社は多いと思います。決算にあたり決算賞与が支給される会社もあることでしょう。
従業員にとっては支払を受けた日の給与所得となりますが、支払う会社側では、取り決めや支払い方法などにより、どの事業年度の損金に算入されるかが異なります。
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法人税法上の取扱
法人が使用人に対して支給する賞与の額は、下記の賞与の区分に応じて、それぞの事業年度の損金の額に算入します。(使用人に対して支給する賞与の額には、使用人兼務役員に対して支給する使用人分賞与の金額が含まれます。)
①労働協約又は就業規則により定められる支給予定日が到来している賞与(使用人にその支給額が通知されているもので、かつ、その支給予定日又はその通知をした日の属する事業年度において法人が損金経理したものに限る)
その支給予定日又はその通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度
②次に掲げる要件の全てを満たす賞与
使用人にその支給額の通知をした日の属する事業年度
[要件]
イ.その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。
ロ.その通知をした金額を、通知した全ての使用人に対し、その通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること。
ハ.その支給額を、通知をした日の属する事業年度において。損金経理をしていること。
③上記①及び②に掲げる賞与以外の賞与
その支払をした日の属する事業年度
決算賞与を支給する場合
当期の業績が良かったので決算賞与を支給したい
決算賞与は盆暮れの賞与に比べると、その事業年度の業績に対する支払という意味合いが強いです。
業績が良かったので社員にも還元したいということで、支給を決定する会社がほとんどではないかと。
2019年3月決算の会社の場合、決算の数字が固まるのは早くても2019年4月中。それから賞与の金額を決め、支給をした場合、原則的な取扱だと2019年4月の損金となるわけです。
業績が良いのだから当期の費用に計上して節税したい
しかし2019年3月期の業績が良かったから賞与の支給を決定したので、できれば決算賞与の金額も2019年3月期の損金としたいところです。
そのような場合に、上記②の規定にのっとって処理を行い、決算賞与を2019年3月期の損金とすることができます。
具体的には、2019年3月中におおよその決算予測を算出し、賞与の支給金額を決め、各人にその金額を通知する。そして新年度開始の日から1か月以内に実際に賞与を支払います。
就業規則に要注意
会社の就業規則で、賞与を「支給日に在職する使用人のみに賞与を支給する」と定めている場合があります。
賞与について、この支給日在職基準が設けられている場合、年度末には在籍していても支給日前に退職した人には賞与が支給されないことになります。つまり期末の時点で債務が確定していないことになってしまいます。
そのため法人税法基本通達で、この点について別途定めがされています。
法人税法基本通達9-2-43
法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、令第72条の3第2号イの支給額の通知には該当しないことに留意する。
つまり賞与について「支給日に在職する者のみ賞与を支給する」という旨の規定を就業規則などで定めている場合には、期末までに決算賞与の支給額を各人に通知していたとしても、それは上記②の規定のイの通知には該当しないということです。
結果的に、通知した決算賞与を翌期の開始日から1月以内に支払ったとしても、上記②の規定の要件は満たさないので、通知日の属する年度の損金には算入することができません。
この就業規則に関する通達は盲点になることが多いので、決算賞与の支給を検討する場合には注意が必要です。
対策としては、在職日基準の規定の後に「ただし決算賞与についてはこの限りではない。」という文言を入れる、もしくは決算月のうちに賞与を決定し支給まで済ませてしまうというのも一つの方法です。
【編集後記】
iPhoneのサウンドに「アヒル」といものがあります。
ちょと鳴らしてみたら、本当にアヒル!
このアヒルに、猫が過敏に反応します。何でだろう?今も鳴らしてみたら、熟睡していたのに起きてしまいました(笑)