EXILE THE SECOND の SHOKICHIくん。グループの楽曲の作詞作曲も手掛けています。
あれだけのパフォーマンスをしている上に、創作活動も活発に行っている。
JASRAC の作品データベースで検索すると、権利所有の作品は50件も。
著作権はどうやって管理してるのだろう・・?
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アーティスト印税と著作権印税の両方が支払われる
SHOKICHIくんのように作詞作曲も行っているアーティストには、実演家に支払われるアーティスト印税と、著作者・著作権者に対して支払われる著作権印税の両方が支払われます。
よく知られていることですが、楽曲が演奏された場合には、実演するアーティストよりも著作物の権利所有者へ支払われる割合の方が圧倒的に高いです。
著作権を個人で所有する場合
個人の所得となり税金も個人で支払う
著作権は作品ができた当初は著作者個人に帰属しています。
権利者が個人ですので、著作権を譲渡しない限り、著作権収入もそのまま作詞作曲を行った個人へ入ります。
この著作権収入は、個人事業にかかる事業所得として申告されている場合が多いと思います。
レコード会社やテレビ局からは、通常4半期に一度支払通知書が届きその後に著作権使用料が支払われますので、その年に帰属する分が事業所得にかかる収入金額になります。
変動所得の平均課税が適用可能な場合も
作詞作曲に係る著作権使用料がある場合、所得税法に規定する「変動所得及び臨時所得の平均課税」の計算が適用できる可能性があります。
「変動所得及び臨時所得の平均課税」は収入の変動が激しい人の税負担を軽減するために設けられている制度です。
それまでヒット曲がなかった作曲家や作詞家が、ある年に大ヒットをとばしたような場合などに、過度な税負担を軽減するよう配慮されています。
〔変動所得と臨時所得〕
①変動所得とは、事業所得や雑所得のうち、漁獲やのりの採取による所得、はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝、真珠、真珠貝の養殖による所得、印税や原稿料、作曲料などによる所得をいいます。
②臨時所得とは、事業所得や不動産所得、雑所得のうち、下記のものをいいます。
- 不動産や不動産の上に存する権利などを3年以上の期間他人に使用させることにより、一時に受ける権利金や頭金などで、その金額がその契約による使用料の2年分以上であるものの所得(ただし借地権設定による権利金による所得には臨時所得ではなく譲渡所得になるものがあります。)
- プロ野球の選手などが、3年以上の期間の専属契約を結ぶことにより、一時に受ける契約金で、その金額が年俸の2年分以上であるものの所得
- 公共事業の施行などに伴い事業を休業や転業、廃業することにより、3年以上の期間分の事業の所得などの補償として受ける補償金の所得
- 鉱害その他の災害により事業などに使用している資産について損害を受けたことにより、3年以上の期間分の事業の所得などの補償として受ける補償金の所得
〔適用できる場合〕
①前々年と前年に変動所得がなかった方、前々年と前年に変動所得がありその平均額が本年の変動所得の金額に満たない方
➡本年の変動所得の金額と本年の臨時所得の金額との合計額が本年の総所得金額の20%以上であること
②前々年と前年に変動所得がありその平均額が本年の変動所得の金額以上の方
➡本年の臨時所得の金額が本年の総所得金額の20%以上であること
〔計算方法〕
「変動所得及び臨時所得の平均課税」の計算が適用できる場合、税額は下記①と②の合計額になります。
①{課税総所得金額ー(変動所得※+臨時所得)×4/5}×超過累進税率
※変動所得の金額はその時の変動所得の金額から前年及び前々年の変動所得の平均を引いた金額になります。
また課税総所得金額が上記「(変動所得※+臨時所得)の金額」以下の場合には、上記①の金額は課税総所得金額×1/5に超過累進税率を乗じて計算した金額とします。
以下「課税総所得金額ー(変動所得※+臨時所得)×4/5」をAとします。
②(課税総所得金額-A)×平均税率※
※平均税率=①で計算した税額/A (小数点以下切り捨て)
〔実際に数字をあてはめてみる〕
計算式があまりにもわかりにくいので、実際の数字をあてはめて計算してみます。
(前提条件)
平成27年
作詞にかかる変動所得 500,000
平成28年
作詞にかかる変動所得 500,000
平成29年
作詞にかかる変動所得 10,000,000
課税総所得金額 15,000,000
①(15,000,000-9,500,000※×4/5)×23%-636,000=1,066,000
※10,000,000-(500,000+500,000)×1/2
②{15,000,000-(15,000,000-9,500,000×4/5)}×14%※=1,216,000
※1,066,000/(15,000,000-9,500,000×4/5)=14%
①+②=2,282,000
単純に課税総所得 15,000,000 に超過累進税率をかけて税額を計算すると 3,414,000 になるので、平均課税の計算を選択した方が税額がかなり少なくなります。
会社をつくり著作権を会社へ譲渡して管理する場合
著作権を譲渡した個人には、譲渡所得が生じる
会社で著作権を管理して著作権収入を得る場合には、まず個人の所有する著作権を会社へ譲渡する必要があります。
個人側は著作権譲渡による譲渡所得が生じます。著作権譲渡による所得は総合課税の譲渡所得であり、その所有期間に関わらず全て長期の譲渡所得となります。
これは所得税法33条第3項1号で短期譲渡所得を規定しているのですが、その条文の最後のカッコ書きで「政令で定めるものを除く。」とされており、その「政令で定めるもの」を所得税法施行令82条に記載しています。
所得税法施行令82条を見ると短期譲渡所得から除くものが記載されており、それが「自己の研究の成果である特許権、実用新案権その他の工業所有権、自己の育成の成果である育成者権、自己の著作に係る著作権及び自己の探鉱により発見した鉱床に係る操掘権の譲渡による所得」です。
つまりここに挙げられている自己の著作に係る著作権の譲渡は全て長期譲渡所得になるというわけです。
譲渡する場合の譲渡金額は所得税法では規定がないため、相続税法の財産評価基本通達を準用します。
財産評価基本通達では「年平均印税収入の額×0.5×評価倍率」で評価するとされていますが、この算式を基礎にして譲渡する時点での個々の作品の収益性などを勘案して計算する必要があるでしょう。
譲渡後は著作権使用料は会社の収入に
著作権が会社へ譲渡された後は著作権は会社の資産になり、著作権使用料は会社の売上になります。
全くの例え話ですが、SHOKICHIくんがこれまで個人で所有していた著作権を管理するために「株式会社YAGI」をつくったとします。
前述した通り、SHOKICHIくんの所有する著作権を「株式会社YAGI」に譲渡します。この時、SHIKICHIくん個人には著作権譲渡の譲渡所得が生じますので、他の所得と合わせて申告をしなければなりません。
著作権譲渡後は著作権使用料は「株式会社YAGI」に支払われ会社の売上になります。この時に「株式会社YAGI」から代表取締役であるSHOKICHIくんに役員報酬を支払います。
つまりこれまで個人の事業所得だった著作権収入が、会社をつくり著作権を譲渡したことにより、いったん会社の収入に、そしてSHOKICHIくん本人には会社から定額の給与というかたちで給与所得が発生します。
役員報酬や賞与の支払い方法にしばりはあるものの、給与所得控除の部分は個人所得の控除にも会社の経費にもなるため節税対策になります。ただし個人の事業所得で「変動所得及び臨時所得の平均課税」の特例計算はできなくなります。
個人or法人どちらをとるかはケースバイケース
著作権を個人で所有し続けるか、会社をつくって譲渡し会社で管理してくかは、その著作者の作品の収益性や所有する著作権の数により異なります。
それほど著作権も少なく著作権収入も多くなければ、費用をかけて会社をつくる必要はないでしょうし、個人の事業所得のままで税金を納めていく方が実質負担が少ないかもしれません。
著作権の数も多く、著作権収入が多い場合には、節税対策として会社をつくるとこも有用だと思います。著作権を会社へ譲渡することで、譲渡所得による所得税は生じますが、相続税の課税対象ではなくなります。
まずはシミュレーションを行って、どちらの場合が有利なのかを綿密に検討する必要があります。専門的なことが多いので、顧問でもスポットでも税理士にご相談ください。
【編集後記】
先週ようやく自分の申告を終えました。
1月中に終えるつもりが多少オーバーしましたが・・・
確定申告の時期にe-taxが24時間稼働しているのはありがたいですね。