猫のいる税理士事務所 河津牧子のブログ

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消費税の税率によって住宅取得資金の非課税限度額もかわってくる

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消費税の税率によって住宅取得資金の非課税限度額もかわってくる

父母や祖父母からの財産の移転を円滑に行うため、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(住宅取得資金)の贈与については税制上優遇措置が設けられています。

一定の住宅取得資金の贈与については、通常の贈与税の基礎控除額の他に別途非課税となる金額を定めているのですが、消費税率の引き上げが実施された場合にはこの非課税限度額も変更になります。

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契約書を確認する

まずは住宅取得に係る契約書の契約日と建物に係る消費税の税率を確認します。

消費税の税率が8%の時には下記の表です。契約日がどこに該当するか?住宅は省エネ等住宅かそれ以外か?で金額が異なります。現在は税率引き上げ前なので、まだこちらです。

消費税率が引き上げられ、契約書に記載される消費税率も10%になった場合は下記の表です。こちらも同じく約日がどこに該当するか?住宅は省エネ等住宅かそれ以外か?で金額が異なります。

※省エネ等住宅とは省エネ等基準に適合する住宅用の家屋であることにつき、一定の書類により証明されたものをいいます。

このまま予定通りに2019年10月に消費税が引きげられたとすると、8%から10%への増税部分の負担額は増えますが、この制度を利用して非課税の措置を受けられる限度額も大きくなります。

適用要件が大事

住宅取得資金の贈与についての非課税の特例は、受贈者及び家屋について様々な適用要件が設けられています。この要件を全てみたしていないと、後々修正を求められ追徴になる恐れもありますので、ひとつずつしっかり確認しましょう。

受贈者の要件

下記の要件の全てを満たす受贈者が非課税の特例の対象となります。

①贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること。(配偶者の父母(又は祖父母)は直系尊属には該当しませんが、養子縁組をしている場合は直系尊属に該当します。)

②贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること。

③贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること。

④平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと。

⑤自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、又はこれらの方との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものではないこと。

⑥贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。

⑦贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること(平成29年4月1日以後に住宅取得資金の贈与を受けた場合には、受贈者が一時居住者であり、かつ、贈与者が一時居住贈与者又は非居住贈与者である場合を除きます。)。
なお、贈与を受けた時に日本国内に住所を有しない人であっても、一定の場合には、この特例の適用を受けることができます。

⑧贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。
贈与を受けた年の翌年1231日までにその家屋に居住していないときは、この特例の適用を受けることはできませんので、修正申告が必要となります。

居住用家屋についての要件

「住宅用の家屋の新築」には、その新築とともにするその敷地の取得又は住宅の新築に先行してするその敷地の取得を含み、「住宅用の家屋の取得又は増改築等」には、その住宅の取得又は増改築等とともにするその敷地の取得を含みます。
また、対象となる住宅用の家屋は日本国内にあるものに限られます。

新築又は取得の場合の要件

①新築又は取得した住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50以上240以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。

②取得した住宅が次のいずれかに該当すること。

  • 建築後使用されたことのない住宅用の家屋
  • 建築後使用されたことのある住宅用の家屋(中古住宅)で、その取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの
  • 建築後使用されたことのある住宅用の家屋(中古住宅)で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることにつき、一定の書類により証明されたもの
  • 上記のいずれにも該当しない建築後使用されたことのある住宅用の家屋(中古住宅)で、その住宅用の家屋の取得の日までに同日以後その住宅用の家屋の耐震改修を行うことにつき、一定の申請書等に基づいて都道府県知事などに申請をし、かつ、贈与を受けた翌年3月15日までにその耐震改修によりその住宅用の家屋が耐震基準に適合することとなったことにつき一定の証明書等により証明がされたもの
増改築等の場合の要件

①増改築等後の住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50以上240以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。

②増改築等に係る工事が、自己が所有し、かつ居住している家屋に対して行われたもので、一定の工事に該当することについて、「確認済証の写し」、「検査済証の写し」又は「増改築等工事証明書」などの書類により証明されたものであること。

③増改築等に係る工事に要した費用の額が100万円以上であること。

非課税の特例の適用を受けるためには手続きが必要

非課税の特例の適用を受けるためは、たとえ税額がゼロであっても、贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与税の申告書を提出しなければなりません。

そしてこの贈与税の申告書には下記の書類を貼付しなくてはなりません。

  • 戸籍の謄本
  • 登記事項証明書
  • 新築や取得の契約書の写し

実際の計算はこうなる

この非課税限度額は住宅取得資金についてのみのもので、贈与税の課税価格を計算する時には、さらに基礎控除額または特別控除額(相続時精算課税適用者)を差し引きます。

下記の前提条件で、贈与税を計算すると以下のようになります。

贈与日:2018年5月1日
新築家屋(省エネ等住宅以外)の取得日:2018年6月30日
新築家屋の取得価額 50,000,000
住宅取得資金の贈与 20,000,000

暦年課税の場合

贈与税の課税価格 (20,000,000-7,000,000)-1,100,000=11,900,000
贈与税額 11,900,000×40%-1,900,000=2,860,000

相続時精算課税の場合

※利用可能な特別控除額は25,000,000とします。

贈与税の課税価格 (20,000,000-7,000,000)-25,000,000<0
∴税額

この場合 25,000,000-(20,000,000-7,000,000)=12,000,000は翌年以降に利用可能な特別控除額です。

【編集後記】

相続税のご相談用の資料を作成していたのですが、これまでに書いた自分の記事がなかなか参考になりました。

税務の記事ばかりだと堅い感じになりがちですが、自分でまとめながら書いていくことは、再確認になりとても役に立っています。

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